SEIKOに見る事業の成長戦略の一考

言わずと知れた老舗の時計メーカー、SEIKOが営業利益の売上高の7割を時計事業で稼ぎ出す見込みとの記事が日経新聞にあった。詳細はこの新聞記事にお任せするとして、この戦略についての成否に関する私見と、私であれば業績改善(売上・利益とも)どうするかという点について考えてみたい。

 

www.nikkei.com

 

まず概況から。

記事を要約すると、営業利益の4割程度を稼ぐ半導体事業を売却し時計事業に専念するという。19年3月期の計画は売上高3100億円、営業利益170億円、自己資本比率35%以上という数字であるが、現状進捗は芳しくないということ。記事中の文章を見ても、近年の実績を見てもジリ貧という印象はぬぐえない。理由は競争の激化も去ることながら、他業種からの参入も増えていることにある。そう、アップルウォッチなど。市場自体がSEIKOにとって不利な状況に傾いているので数字を伸ばそうにも伸ばせない状況なのかも知れない。ではこの状況を改善するためにどのような手を打つべきなのか?

 

現状の問題点から考えてみると、新興国への輸出強化のためのハイエンド商品の開発と広告宣伝費の拡大が必要だと思われる。

理由は以下の3点。

 

ー新興国のマーケットのリスクは引き続きあるものの、成長軌道にある。インド、中国など。両国ともGDP成長率は5%を超える。富裕層の数がとんでもなく多い。

ー半導体事業を売却した理由にもあったが、恐らく財務的観点から投資できる金額が限られている。

ーSEIKOのブランド力は一定の力がある、がまだ新興国においては薄いのでは?

 

上記の3点を踏まえると、新興国へのアプローチを行い新しい需要を開拓するのが一番だと思う。

 

この結論を導いた分析を以下に記載しておく。

 

売上の過半は半導体と時計事業。ここ数年営業利益率も下降していたが、売上高はあまり変わっていない。純利益に関しては基本的に下降傾向にあり、一時的に18年3月期が膨らんでいるが、これは売却に伴うものであるだろう。すなわち、費用が損益を圧迫している状況が続いていた。半導体自体投資がかさむものであるため、費用を圧迫していたものと考えられる。しかしこの状況は売却をしたことで改善される見込み。売上、損益も減少するが、利益率が改善するという結論。SEIKOもいろいろな手を打っているのだと思うが、思うにマーケティング戦略で勝負している感が否めない。勿論その手も必要なのではあるが、抜本的な解決策に至っていない。

 

時計事業のコスト構造が大幅に変動するものでないということを考えれば、売り上げの成長率が低いことが原因と考えることが出来る。課題はこれに対してどのような手を打つのかということだと思う。売上の成長率が低いのは何故か。冒頭に述べたようにアップルウォッチ等の参入等もあり、事業環境が自身にとって不利な形に変わってしまったことだ。この状況を改善するためには以下の方法が考えられる。

 

ーマーケティングの強化(新興国への輸出増加):要検討

ーアップルウォッチ等スマートウォッチを開発する:投資余力の面から不可

ー単価を上げる:要検討

ー商品のラインナップを増やす:要検討

ー他社の買収:投資余力の観点を検討

ー販売チャネルの増加:既にあり

 

現状に対してどのような手を打つかという観点についてはマーケティングの強化等が一番先にくるのでは?SEIKOの社内環境、社外環境を考えると費用をかけるべきはここであり、それ以外の点に関してはコストがかかり過ぎる、かつリスクが高い。抜本的な改革にはなっていないかもしれないが、それでも半導体に出資して体力を消耗していくよりは大いにマシな選択だと思える。かつその状況で更に高価格帯の新商品の開発が出来ればなお良いと思われる。

 

以上が私見です。ざっと書きましたが、ご参考あれ。